ブラックプール遠征記

〜その男しんがりにつき〜

1.      プロローグ

ブラックプール。その単語は競技ダンスをやっている者なら1度は耳にしたことがあるだろう。イギリスでもっとも伝統のある競技会。数々の伝説が創られた会場。その伝説と人生を共有しようと心をときめかせ、あるいは伝説を創りにやってくるコンペティター達が、消防法違反の会場に1週間だけやってくる。行ったことのある人々は「あそこには魔物が住んでいる」「行くとダンスの価値観が変わる」と誇らしげに言う。私は無け無しの貯金を下ろしイギリスへ飛んだ。

 

2.      シベリア上空8千メートル

飛行時間約11時間。ユナイテッド航空の飛行機は大陸沿いに北上をしロシアを抜け北海を横断しロンドンヒースローへとノンストップで飛び続ける。機内では暇を持て余した日本人コンペティターが最後尾のトイレ前で雑談やストレッチや筋トレを行いエコノミー症候群を予防する。中にはノートPCでゲームを試みる物も居るがバッテリー切れで1時間と持たない。更に、ここぞとばかり寝つづける者も居る。皆意気揚々としていてブラックプールへの期待でいっぱいのようだ。窓から見下ろす景色は1面海か雪景色で落ちた時の過酷なサバイバルを予想するのにはさほど難しくない。ユナイテッド航空のサービスは良いほうだと聞く。確かにシートはヘッドレストがついており寝やすいし、毛布も抜群だ。靴下や歯ブラシの配布はもちろん、機内での食事以外でも飲み物は飲み放題、クッキーやパンやカップラ攻撃は常備している。雑談をしていると色々な人が話しかけてくる。外人はリアクションがでかい!トイレを待っている間も、しきりに股間を押さえたまんねーよと言う顔でこちらの笑いを誘っていた。また、ある日本人が話し掛けてきた。その人の髪型から推測するにシニアモダンの選手であろう。しかし、なぜか瀬古選手のことは知っていても佐倉・高橋・夏見選手のことは知らないらしい。

後者二人を知らないならまだしも佐倉CPを知らないとは。。( - -;)

 

3.      旅の空から

ヒースロー空港でトランジットしマンチェスターに向った。ヒースローでの待ちの時に桑原先生夫妻や、有名選手が居た。マンチェスター行きの飛行機では実質30分ぐらいしか上空に居ないにもかかわらず、ものすごい素早さで飲み物と食事の用意と後かたずけをしていた。この機内で出るサンドイッチはすごく美味であった。

マンチェスター空港内から駅までは途中のエレベータを駆使すればすべてカーゴで行ける。

だが、混んでいる時はエレベーター待ちは余儀ないだろう。

  ブラックプール駅までの乗車賃は往復で買ったほうが断然安い!更に、椅子などに荷物を乗っけていると車掌さんに怒られるので注意が必要だ。

 

4.      ブラックプールの人々

まず、思ったのが“寒い!”スーツにフリースでもヤバイぐらいだ。セーターを良く着用していたが、更に上着があった方が良いだろう。だが、体の構造が違うのか、町行く女性などはノースリーブでへそを出しアイスを食っている。どういう事なんだろうか?寝る時も毛布1枚しかないのでフリースを着て寝た。更にスプリングが弱すぎで、腰が痛くなりねづらいのだ。

そして、デブが多い!しかも皆やたら陽気で、スーツケースを後ろから押してくれたり、食事中の外のガラスに口で吸い付いたり、バスの中から軍団でブラジャーを見せている人達もいた。口蹄疫の進行具合が伺える。()

しかしウインターガーデンの中に入ると全然空気が違う!3階なんかは熱気がたまり暑くてYシャツでも汗が噴き出る。それほどの熱量が選手や観客から出ていることは、試合の盛り上がり具合からもわかる。

更に、店員の態度が日本に比べると格段に悪い!マックに行った時の事だが、やたらだらだらとしていて物を取りに行ってはおしゃべりをしたりしていて添付品を忘れていた。ホットケーキのシロップやコーヒーのミルクなんかはほぼ50%の確率で忘れられる。また、背の高い人が多い。これはウインターガーデンで観戦をしようとした所あまりの人垣の高さに唖然とした。平均身長175センチぐらいで、180以上の人がいくらでも居るのだ。(コンペティターに多いだけかもしれないが)

 

5.      サミーの試合出場の諸注意

ウインターガーデンの休日にタワーでブラックプールの前哨戦となる大会が行われる。今回はIDSFオープンの試合と重なった為、通常よりも少ない出場組数のようだ。しかし、うまい人はうまい!3次予選ともなると半端でない奴等が顔を連ねている。日本人軍団は全員2次で死亡!しかし、時差の為か非常に疲れと眠気が襲ってくるので体力が奪われず良かったと考えた。この試合は当日エントリーでしかも来た順にヒートが割振られて行く。なので今回は同じ日本人同士の対決になってしまったのである。また、コールなのでいつ始まるかとか時間割もあいまいなので全く気が休まらないのである。これに比べると日本の試合はまだましと考えてしまう。 主催者のサミーの姿が無い様に思えたが気のせいなのだろうか?

  また、タワーの入場券を買って入るので、タワーにあるアトラクションはすべて見られるのだが、今回は忙しくて水族館の端を見たに過ぎなかったが、でっかいカメが居て面白そうだった。機会があればタワーにも上ってみたいものである。

 

6.  ファーストクオリファイラテン

朝の練習会が終わるとすぐに前半の試合が始まるので最後のほうは試合出場の準備をした方が良いだろう。また、ノーシードのすごいうまい選手もここから踊るので見逃せない。今回は、インターでL・M優勝したマラット選手が本戦初出場の為ここから踊っていたが、最初知らなかったのだが見ていたら加藤さんがそっと教えてくれた。その他にもたくさんのすばらしい選手達が踊っていてこんな状況でいつも戦っていたら上達が早いか、もしくは早々に辞めているだろうと感じた。@ユースAアマBプロの順でうまい選手の純度が高いと感じたそれはヨーロッパでプロで食っていけるのはほんの一握りだからだそうだ。日本のプロが1番多いと感じた。アメリカはやや、プロで食っていけるそうで、中国もダンス界の発展が著しいそうだ。

帰ってから久保さんに教わったのだが、踊る位置としては、四つ角は死角となるので、サンバやパソは平行四辺形に踊って何べんもジャッジの前を通った方が良い。チャルンも死角に入らない様にその平行四辺形の頂点で踊るのが良いのだがそこにはいるんだよな〜。。。

 

7.  観戦方法

観戦するのも一苦労でもちろん席を買っておけば悠々と座ってみられるのだが、ツアーぐらいでしか手に入らないので、席の一番後ろの立ち見スペースに携帯用椅子(ウインターガーデンからフラット街方向に歩いて行き、一つ目の角の先の左側の1£ショップの隣の店で売っている。約2.5£)を置いて陣取ろう。場合によっては7時間ほどそこから動けなくなるので、必ず2人〜4人で行動をし、トイレや軽食時に場所を取られない様に連係プレーをしよう。外人にぺらぺら言われても安易にイエスと言わないようにしよう。事実グールさんの椅子に外人が腰掛けその椅子が破けた例もあるのだ。どんなケツ圧なんだ!()

その苦労が実ってか、プロラテンはほぼすべて完全生で見る事が出来、アランのラストルンバも見る事が出来た。他の立ち見の観客は総立ちの観客にはばまれ見る事が出来ていない様だった。今年のアマラテンではフランコが他のパートナーと踊ってしまったり、リカルドと一緒に踊ったりのパフォーマンスや、スラヴィックCPがマイケルのまわりをジャイブのシャッセで1周した挙げ句ビアータのケツを叩いて逃げていったパフォーマンスが衝撃的だった。

 

8.       食事

フラットで何か物を作る時は1£ショップや安い店で鍋や食器を買い揃えよう。

フラットによっては前の人が置いて行ったり備え付けの所もあるので状況を見てから買いに行こう。また、塩胡椒などの調味料、カップラーメンレトルトカレーと佐藤のご飯は、10食分ほど用意したほうが良い。向こうにはマック、パスタ店、中華料理屋があるがどれも高い。頻繁には行けない感じがした。また、名物のフィッシュ&チップスはなかなかいけるらしい。(今回食う暇が無かった。。)

今回口蹄疫の伝染防止として4本足動物の肉は食わない様にしたが、それほど気にする必要も無い様だ。ショートブレッドや、フルーツ入りクッキーはとってもおいしい。そこに現地調達のヘアムースの様なホイップを掛け、コーヒータイムをすればあなたも有閑マダムの仲間入り!()インスタントコーヒーは持って行った方が良いでしょう。

 

9.       買い物・荷物

どうしてもお土産や、ダンスシューズの購入があるので出来るだけ現地で捨てて行ける物を持って行こう。また、洗濯ロープや洗濯挟みは100円ショップで買い捨ててこよう。そして、洗濯粉は必要最低限だけ持ってこよう。近くにコインランドリーがあるが、練習着と下着だけなので、風呂場で洗い手で水を切った。タオル系も捨てて良い物を持って行き、何回も使用した挙げ句捨てよう。靴も捨てて行こう。ティッシュ、トイレットペーパーは1つずつ持って行き向こうで足りなくなったら買おう。ボディシャンプー、シャンプー、リンス、食器洗剤も何人かでシェアすれば安価ですむ。

 

10.   感想

行ってみて思ったのだが、生活環境は最悪だった。しかし、ダンサーとしては良い体験をし、すばらしいダンスを見られた事にとても興奮を覚えた。そして、このすばらしい体験のセッティングをしてくれたともえさん、わざわざフラットに来て冷製パスタを作ってくれた細目、遊園地のジェットコースターに連れて行ってくれた嶺岸先生に感謝をしその幕を閉じようと思う。